愛知県弁護士会所属 弁護士 服部一将 かにえ法律事務所

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気になる判例紹介

8月 27 2013

カフェー丸玉女給事件

 久しぶりに判例紹介です。

 

 カフェー丸玉女給事件というのは,民法で債権を勉強していると「自然債務」の例として出てくる事件ですね。

 

 昭和8年,大阪道頓堀のカフェー「丸玉」(いわゆるキャバレー)の女給(今でいえばホステス)Xと親しくなった客のYは,Xの歓心を買おうと,将来の独立資金として400円を贈与する約束をした。ところがYが400円をいつまでたっても支払わないので,XはYに対して400円の支払いを求めて裁判を起こした,というものです。

 

 

 1,2審はXの請求を認めたのですが,大審院(今でいう最高裁)は,この400円の債権は,履行がなされればそのまま保持していいが,履行されない場合には履行を強要できるものではないと述べて破棄差し戻し(もう一度1審からやり直せという意味)の判決を下しました。

 

 飲み屋での戯れ言を真に受けてはいかんということですね。

 

 民法の教科書だと,「このような自然債務には給付保持力のみがあり,訴求力や執行力がない」という具合の説明になるわけですが。


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6月 25 2013

勘違い騎士道事件

 刑法を学習していて一番印象に残る判例は,この「勘違い騎士道事件」ではないかなあと思います。

 

 被告人が英国人であったため,「英国騎士道事件」と言ったりもします。

 

 事案の概要は以下のとおり。

 

 空手三段の腕前を有する在日英国人Xは,夜間帰宅途中の路上で,酩酊したA(女性)とこれをなだめてい たBとが揉み合ううち,Aが倉庫の鉄製シャッターにぶつかって尻もちをついたの を目撃した。

 

 Xは,BがAに暴行を加えているものと誤解し,Aを助けるべく両者の間 に割って入った上,Aを助け起こそうとし,次いでBの方を振り向き両手を差し 出してBの方に近づいた。

 

 すると,Bがこれを見て防御するため手を握って胸の 前辺りにあげてボクシングのファイティングポーズのような姿勢をとったため,XはBが自分に 殴りかかってくるものと誤信し,自分とAの身体を防衛しようと考え,とっさ にBの顔面付近に当てるべく空手技である回し蹴りをして,左足をBの右顔面付 近に当て,Bを路上に転倒きせて頭蓋骨骨折等の傷害を負わせ,8日後に右傷害 による脳硬膜外出血及び脳挫滅により死亡させた。

 

 さて,何とも不幸な事案ですが,1審の千葉地裁では誤想防衛(正当防衛状況ではないのに正当防衛状況だと勘違いして正当防衛行為をした)であるとして無罪となりました。

 

 2審の東京高裁では,誤想過剰防衛(正当防衛状況ではないのに正当防衛状況だと勘違いし,しかも防衛行為はやりすぎ)であるとして執行猶予付きの有罪判決になりました。

 

 最高裁も同様の判断でした。

 

 「誤想防衛」や「誤想過剰防衛」を勉強するときに必ず出てくる判例です。

 

 Xがキリスト教に基づく騎士道精神を発揮しておかしなことになってしまったということで,「勘違い騎士道事件」という名前が付いています。


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6月 22 2013

宇奈月温泉事件

 宇奈月温泉事件というのは民法を学習すると初めのころに出てくる有名な事件です。

 

 「権利の濫用」という言葉が初めて大審院(現在の最高裁に相当する戦前の裁判所)の判決文中で使用された判決として習います。

 

 事件の概要は以下のとおり。

 

 富山県黒部市(当時は下新川郡内山村)の宇奈月温泉で温泉事業を経営していたY社は,黒薙川上流から宇奈月まで約7.5キロメートルにわたる引湯木管を敷設して温泉を引いた。

 

 このとき甲地(約370平方メートル)の一部(わずか6平方メートル余り)について,土地所有権者と土地利用権について契約がない状態であった。

 

 このことを知ったXは,甲地と隣接の乙地(急傾斜で利用しにくい土地)を買い取り,Y社に対して,引湯管の無断通過は所有権侵害であると言ってその撤去を要求し,それができないなら甲地・乙地併せて約9900平方メートルを地価の数十倍の価格で買えと強要した。

 

 Y社がこれを承認しなかったので,Bは土地所有権に基づき木管の撤去等を請求して訴訟を起こした(一部事実を簡略化)。

 

  

 1審と2審は請求を棄却。

 

 大審院は,昭和10年10月5日,「権利ノ濫用」という文言を判決文中で初めて用い,Xの請求(所有権の行使)は権利の濫用にあたるため認められないとして請求を棄却しました。

 

 利用価値の無い甲地はXにとってなんら利益をもたらさないのに対し,請求を認めて引湯管を撤去すれば,宇奈月温泉と住民に致命的な損害を与えることになります。

 

 このような結果をもたらす所有権の行使に基づく請求は所有権の目的に反するものであり,権利の濫用であって権利行使が認められないとしました。

 

 

 まあ,昔から強欲な人はいるということですね。

 

 この判決以後「権利の濫用」という概念が徐々に定着していき,昭和22年の改正で民法1条3項に「権利ノ濫用ハ之ヲ許サズ」という風に明文化されました。

 

 ちなみに,名古屋市政資料館に宇奈月温泉事件の判決書が展示されています。

 

 私は「こんなところにあるんだ」と見たときに感動したのですが,まわりの一般の観光客の方は素通りしておりました(^^)

 

 


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